幸せになりたいけど 頑張りたくない

実家暮らしアラサー女のブログ。「言語化能力を鍛えるため」という大義名分で更新されるが中身はくだらない。たまにコスメ・映画レビュー。

白ゆき姫殺人事件

Amazonプライムに入会してからというもの、気になっていた映画を家から一歩も出ずに見られるようになって嬉しい。

「映画はスクリーンで観ないと観たことにならない」と今でも思っているけど、もうしょうがないかな…と自分の怠惰に白旗をガンガン振っている。

「気になるけど借りるほどじゃないんだよなぁ…」という映画を気軽に見られるのも嬉しい。

今回観た「白ゆき姫殺人事件」も気になるけど借りるほどじゃない映画のうちの1つで、正直あまり期待せずに観始めたのだがこれがおもしろかった!

 

※以下ネタバレ含みます

 

 

美人OLが惨殺され、事件後行方をくらましている被害者同僚・城野美姫に疑惑の目が向けられる。

城野が犯人かどうかわからないうちから、彼女のイメージの断片が誰にも止められない速さで拡散され犯人に仕立て上げられていく様は恐ろしかった。

ネットの利点として匿名で情報発信できる点が挙げられる。匿名という盾はとても心強いように思えるが、何がきっかけで壊れるかわからない。投稿が炎上し、投稿者の本名、顔写真、学歴があっという間に明かされた例は枚挙にいとまがない。

拡散を速めるのは情報の正誤ではなくゴシップ性だ。どれだけ楽しませてくれるか、おもしろおかしい気持ちにさせてくれるか。この映画のように、被害者が赤の他人であれば殺人事件さえエンターテイメントになるのだ。「かわいそう」と画面を見つめる瞳の奥には好奇心の炎がめらめら燃えている。

 

城野含め「いるいる」と頷きそうになるぐらいリアルな登場人物も良かった。

女が女をバカにする時の一目ではそうとわからない蔑み、相手を思っているように見せながら一番相手の嫌がることをする陰湿さ。「嫌がらせだと思ってしまう私が悪いのか?」と思わせる線引きが絶妙でとにかくうまい。自分は悪者にならずに相手を悪者にする術を心得ている。

城野の知人による証言の再現映像も、証言者によって細かく異なるのもおもしろい。城野が妄想好きと判明した後では、城野の手記もどこまで真実か疑わしい。何が真実かなんて、最早当事者にもわからないのだ。みんな自分の見たいように物事を見て、信じたいものだけ信じているのだ。

終盤「身勝手な容疑者」という言葉が出てくる。ワイドショーの製作陣、出演者、ネットでつぶやく匿名に守られた人々も、言わずもがな身勝手だ。だがその身勝手な評価に踊らされているのも、同じ身勝手な人々だ。散々好き勝手言っておきながら少し時間が経てばカンタンに忘れるのだ。城野に会っても気づかなかった赤星のように。