幸せになりたいけど 頑張りたくない

実家暮らしアラサー女のブログ。「言語化能力を鍛えるため」という大義名分で更新されるが中身はくだらない。たまにコスメ・映画レビュー。

「良い人がいたら、結婚してほしいと思ってるよ」

ここ数日、結婚について考え始めた。

結婚から始まって、自分が望んでいるものとそれが手に入る可能性、最終的に生まれてこない方が良かったんじゃないかという結論に達した。まぁいつものことだ。

「結婚について考え始めた」なんて、書くとプロポーズでもされたみたいだが、そもそも私に恋人はいない。

きっかけは母親だ。ある新聞記事を指して彼女はねえねえと私に話しかけて来た。

「この女の人、独身で正規雇用じゃなくて実家に住んでるんだって。結婚してお子さんのいる親戚の家に行くと子どもたちに『おかえり』って言われるんだって」

独身で非正規雇用で実家暮らし。今の私にそっくり当てはまるし、あなたの未来だと言われてもあぁやっぱりと思う。だからと言って母親が指した新聞記事を読む気にもならず、ふぅんと生返事をした。

「あなたもこうなったりしてね〜」と無邪気に言う母親に、同じことを思っていたはずなのになぜかカチンときた。

その理由として一番納得できるのは「他人に未来を勝手に決められたくない」だった。私は自分に対する許容範囲は広いが、他人に対する許容範囲は恐ろしく狭い。ふと、母は私にどんな未来を期待しているのだろうと思った。

「じゃあどうなってほしいの?」そう母に問いかけた。

 

「そりゃあ、良い人がいたら、結婚してほしいと思ってるよ」

 

そう返された時、私は内心鼻で笑った。今時結婚って。

けどそのすぐ後で私の体は心と正反対の反応を見せた。涙が出てきたのだ。

慌てて見られないうちに自分の部屋に入って涙をぬぐった。何が起こったか自分でもわからなかった。

それから私は結婚について考えるようになった。

 

元々私には結婚願望がない。結婚したいと思ったことはあったけど、とても短い期間だったし、今思えばおとぎ話に憧れる子どもそのままだった。

少なくともここ数年は結婚したいと思ったことがない。結婚どころか恋愛からもグングン遠ざかり(遠ざかるどころか恋愛に近い時期すらなかった気がするが)、異性も同性もひっくるめた他人という存在から進んで距離を取るようになった。こんな状態で結婚なんてそれこそおとぎ話だ。

なのになぜ結婚についての話を振られて涙が出たのか。実は結婚したいと密かに思っているというのが一番盛り上がるだろうが、私の中で無視できないほど生々しい形を作っていたのは「親への負い目」だった。

結婚しないということは「うちの子は異性に結婚相手として選ばれなかった」という負い目を知らず知らずのうちに親に背負わせるのかもしれない。そう考えた時、私は親からの期待を一度でも裏切らなかったことがあっただろうかというパンドラの箱と寸分違わない疑問も抱えてしまった。

 

話は逸れるが、少し前に私が「他人に理解してほしい」という気持ちを抱えていることを他人に指摘された。うさん臭い占い師にみてもらったみたいだが、ある程度私の生い立ちやこれまで私の人生に起こった出来事を知っている人が言ったので信憑性はあるし、私自身そうだと認めざるを得なかった。

だが私にとって「他人からの理解」なんて一生得られないものであることも、変えることのできない事実なのだ。

例えば人生で辛かった出来事を打ち明けて相手から「わかるよ」と言われても、それは「あなたの気持ちを理解した」という意味ではない。「あなたの話を私の頭で翻訳・想像して、まるで自分のことのように感じられた」という意味でしかない。他人の頭で再生されるのは自分が感じた出来事そのままではなく、相手の経験や知識に依った別の人間の視点によるフィクションだ。それは「理解」からはほど遠い。

 

10代の頃は人と話したいことがいっぱいあった。好きな音楽、こないだ観た映画、心を震わせたセリフや歌詞。だが周りにそういう話をできる人は全くと言っていいほどいなかった。極たまにそういう話をできる人が現れた。私はその人と自分は理解し合えていると信じていた。今ではそれが幻想と願望が入り交じった錯覚だったとわかるし、わかってからは他人とそういう話をしたいと思わなくなっていった。他人と話すことに意味を見出だせなくなった。

理解してほしいと望みながら、それが決して手に入らないもどかしさを抱えたまま人生を終えるのだろうと覚悟している。というか諦めるほかない。

皮肉なのは、この他人からの理解の諦めの根っこにいるのが、他でもない母親であることだ。そして彼女は私にそうした根を植えつけたことをつゆほども知らない。

 

その母親に苦行としか思えない結婚をしてほしいと言われ、親の希望を叶えられないことで親に負い目を負わせ、私は自分に「親の期待を裏切り続けた親不孝者」のレッテルを貼らずにはいられなくなる。ほとんど呪いだ。望んでいないのにお互いの首を絞めあっている。こうなると現実逃避じみた考えしか浮かばなくなる。

結婚なんて制度、なければいいのに。

 

早いうちに家を出なきゃならない。