幸せになりたいけど 頑張りたくない

実家暮らしアラサー女のブログ。「言語化能力を鍛えるため」という大義名分で更新されるが中身はくだらない。たまにコスメ・映画レビュー。

フロリダ・プロジェクト(The Florida Project)

※ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

ディズニー・ワールドの隣の安モーテル、マジック・キャッスルでその日暮らしをする女の子ムーニーとその母親ヘイリー。

全身タトゥーとピアスだらけ、教養なし、態度悪しと三拍子揃ったヘイリーは、仕事も紹介してもらえずいつもお金を必要としている。そんなヘイリーがお金を稼ぐ方法なんて限られている。楽しかった日々は終わりへと向かい、予想通り母娘は行き場がなくなっていく。

ヘイリーはどう見ても“底辺”と呼ばれる層に属する人間だ。だがどんなに追いつめられてもムーニーに当たったり怒ったりしない。母親として精一杯ムーニーを守っている、そうとはわからないように。

ムーニーは「大人が泣くときわかるんだ」と言う。まだわからなくていいことをわかってしまうムーニーの言葉に、どんな顔をしていいかわからなくなる。

中盤からムーニーは大音量の音楽が流れるお風呂場で遊ぶようになる。カメラはムーニーの視点と同じ高さに据えられていて、どうして一人で遊んでいるのか、大音量で音楽が流れているのかわからない。突然シャワーカーテンが引かれ男がヘイリーに文句を言う声が聞こえてくる。これが一番キツかった。何が起こっているのかも、大人に守られていることも知らずに子どもは楽しく遊ぶ。いずれ成長し自力で生きていかなければならなくなったとき、子どもたちは自分を守る方法を誰かから教えてもらっているだろうか?

 

ウィレム・デフォー演じるモーテルの管理人・ボビーも良かった。

彼自身の事情ははっきり描かれないものの、順調と言えないことだけは確かだ。

モーテルで暮らす子どもたちをなんとかしたいと思っている、でも自分はあくまでも「管理人」であって「親」ではない。できることは限られているし教育を受けさせてやることもできないけど、危険な目にだけは合わせまいと目を光らせている。

 ボビーが「管理人」や「父親」としての限界を感じているであろう時、彼の顔ではなく背中が映される。子どもがいない場面でも、徹底して決定的な場面を映さない。

大人は決定的な場面を見せられなくても察するが、子どもはそうじゃない。

 

ラスト、ムーニーは自分のすぐそばにあった“夢”を目の当たりにする。みんなが求める”夢”は、安モーテルでの日々を心から楽しむムーニーの目にどう映っただろう。

 

重い内容とは裏腹に、パステルカラーの映像が観ていて楽しい気持ちにさせてくれる。それが何より怖かった。