Eちゃんへ
宛名にあなたの名前を書いたけれど、あなたが読むことは想定していません。
むしろ、読まれないであろうからこそ、あなたに直接言えない・言わなくていい・傷つけてしまうだろうことを書きます。
直接言えないなら書かなくてもいいじゃん、と私も思います。
思っていることはなんでも言えば・書けばいい、なんて思いません。それが言わなくてもいいことで、人を傷つける可能性があるなら、なおさらです。
でも言いたいことや思っていることを表に出せず、モヤモヤした状態が続いているというのも、健康的ではありません。
あなたに言いたいことを抱えている自分のモヤモヤを晴らすために、書くことにしました。
あなたから久しぶりに連絡が来た時
「どうせ趣味活動を見に来てくれって内容だろうな」
と思いました。気が進まないながらも確認してみたら、やっぱりその通りでした。
あなたはいつも、自分に都合のいい時しか連絡しませんでしたね。
打ち込める趣味があって、それを公の場で発表しているのは、素直にすごい・うらやましいと思います。
以前一度だけ、あなたの趣味活動の成果を見に行ったことがありました。
正直「上手だなー」以上の感想を持てませんでした。
限られた時間とお金を、そのぐらいの感想しか持てないものに費やすほど私はヒマではありません。
そのことを正直に伝えることもないと思い、やんわりと断りました。
断り続ければそのうち誘ってこなくなるか、もしくはスルーすればいいと思っていました。お互い、いい大人といえる年ですから、なんとなく察してくれるだろうと。
あなたは「また誘ってもいい?」と返してきました。
こういう質問に「誘わないでほしい」と正直に言う勇気を持たないといけない、とこの時私は痛感しました。相手を傷つける覚悟を持たないと自分が消耗するだけだ、と。同時に「答えが決まりきってる質問なんかするなよ」とも思いました。
結婚式に誘った時もそうでしたね。
「その日空いてるなら良かった!結婚式やるの!来てくれる?」
相手に言ってほしいことを言わせるのが、あなたは得意でした。相手の退路を断つことも、「相手に言わせた言葉は相手の本心じゃないことがほとんど」という事実に目をつぶることも。
本題に入る前にこちらの近況を聞いたり本題と関係のない雑談をしたり、長過ぎる前置きを置くことで、さも「普段から連絡取り合っている」感を出すのは恐ろしく下手でしたけど。今思うと、あれはあなたなりに罪悪感を感じていて、ごまかそうとしていたのかもしれませんね。
結局私は「次行けたら行くね」と逃げました。それが正解だったのか、正直に言うべきだったのか、今でもわかりません。
その後に「会えなくて残念」という内容を送ってきましたね。
「あなたは数少ない私の好きな人だから」とも。
「興味のない人から向けられる好意ほど
気持ちの悪いものってないでしょう?」
一時ネットで「残酷」と話題になったマンガのセリフが頭をよぎりました。マンガを読んだ時は「嬉しいと思うけどな」なんてのんきに首を傾げたけど、なるほどよくわかりました。私の場合「気持ち悪い」より「恩着せがましい」の方がしっくりくるけど、ありがたくないという点は激しく共感しました。
Eちゃん、私はあなたのことを好きだと思ったこともなければ、友達とすら思っていません。良くて「知り合い」です。
私のことを「好き」と言っているのが本当だとしたら、そんな判断できるほど私のこと知りませんよね?
私はあなたに自分のことをほとんど話したことがないし、むしろ話したくありませんでした。
共通の知り合いで集まって飲んだ時のことを覚えていますか?他の子が「最近出会った変な男」の話をしている途中、あなたは「私もっとヤバいのに会ったことあるから、その程度じゃなんとも思わない」とその子の話をぶった切って誰も聞いていない自分のダメンズ遍歴を語りはじめましたね。
その前から大して仲良くもないのにやたらボディタッチが多いところと、自分の常識を強要してくるようなところを少し警戒していました。
見なくていいものを人より見た分、苦労も多くそうならざるを得ないのかもしれない。そう物分かりのいいフリをして、腕を組まれる度、何か強要されているという気配を感じる度、「ちょっと苦手」という気持ちにフタをしてきました。
でもあなたが自分の苦労と不幸に酔いしれながら話している表情を見て、私は静かに心のシャッターを閉めました。
Eちゃん、あなたに言いたいことは他にもある気がするけれど、一番言いたいことは間違いなくこれです。
苦労や不幸の経験の多さと、ものごとを測るものさしの精度は比例しません。
「この中で誰よりも自分が苦労している」という思い込みは、傲慢な勘違いです。
あなたとのやりとりを通じて、自分の嫌なことを嫌と伝える努力をしないといけないこと、断る時はハッキリ断ること、相手を傷つける覚悟も自分を守る上で必要であることを学びました。
あなたがいくらSNSを更新しても、連絡をしてきても、私からのアクションはないでしょう。
私はあなたより私が大事なので、あなたを傷つけることになっても、私を守ります。
さよならEちゃん。お元気で、あろうとなかろうとどうでもいい。