仕事納めをした途端、肌が荒れた。
ガサガサになったUゾーンに小さいニキビが大量発生した。
頬の赤みがいつにも増してひどくなり、ニキビ跡も心なしか濃くなった。
口元に白ニキビが数年ぶりにできた。
このところ、肌の調子はわりと良かった。
この前変えたスキンケアが肌に合っていたのかもしれないし、規則正しい生活をしていたからかもしれない。
多大なストレスを抱えているとは思えないので、去年の疲れが一気にやってきたのだと無理矢理自分を納得させる。
2019年、自分は何をしたのか。手帳をめくってみる。
歯医者にこまめに通った。
久々に友人たちと会った。
首のシワをなくし猫背を改善するため、ネットで続けられそうなエクササイズを探し姿勢を常に意識するようにした。結果は出ていない。
シャンプーを変えトリートメントを毎日使うようになった。髪がサラサラになった。
髪を短くした。鏡に映った自分が男にしか見えず、あわてて服とアクセサリーを買ってなんとか整えた。
親知らずを抜いた。
気乗りしなかった職場の飲み会にちゃんと参加した。
好きなブロガーが始めたオンラインサロンに入会し、オフ会にも参加した。周りと自分を比べて疲れただけだった。
全身脱毛に通い始めた。
メイクの勉強をした。買った美容本とコスメの数と総額は恐らく史上最高だ。
デパートで化粧品を買うようになった。
2019年の大晦日のお昼、めずらしく外食した。ガラスコップがうっすら曇り底には小さな何かの粒が沈み、注文した温かい紅茶をカップに注げば油が浮いてくるという最悪な衛生環境だった。ああいうとき「コップを変えてくれ」と言えない自分にまた少しガッカリした。
スキンケアをきちんとするようになった。
良くも悪くもなかった乳液を使い切り、新しい乳液のフタをおととい開けた。
“これで何か変わるかもしれない”
今までこんなバカげた期待を何度してきただろう。期待と些細な変化が起こす奇跡に甘えた結果何も変わらなかった。それでも私は「今年こそ何か変わるかも」とどこか期待を捨て切れない。
確か去年の年始には「今年こそ恋愛する、彼氏つくる!」と息巻いていた。2019年のエンドロールが流れ終えた今、私の隣に男はいない。
「ふざけんな」と思いながら顔には出さず頑張ったときもあった。周りが避けている仕事を嫌な顔一つせず片付けたこともあった。化粧の腕も確実に上がった。ほめられることもなかったけれど、そこまで悪くない年だった。そのはずなのに「男ができなかった」というだけで去年何をしていたんだと自分をねちねち責める。どうせ今年も何もしないくせに。
このところ年をとるのが怖くなった。正確には「年をとるのが」ではなく「何も変わらないまま年をとるのが」。
人が当たり前のようにできることが、私にはどうしてもできない。若いならまだいい。年を重ねるとそれはただの重い抱えきれない荷物となってのしかかってくる。そのくせその荷物は見える人には見える。絶対に見られたくないのに。
「あと3年の命です」と言われても、むしろ嬉しい。いや3年もなくていい、1年とか半年でいい。気がかりなのは借金と日記と私物の処分だけで、それさえ済ませてしまえば、保険金さえおりてくれれば、いつでも死を歓迎する。
いやいやどうせ死ぬなら私を苦しめ傷つけたアイツにも苦しんでもらわなきゃ、と思わないでもない。でもめんどくさい。今さら何かしたところで何も変わらないし。どーせいないであろう神様、私の代わりに裁きをお願いします。
こんな調子であと何年生きるのか。
新年を迎えても気持ちなんてちっとも切り替わりやしない。
どうせ何も変わらない2020年、今より人目につかないようにと背中を丸めるくせが悪化する気がしてしょうがない。